[据え膳喰わぬは…★-4-]
「会いたかったよ、鋼の。そろそろ私と付き合い気になったかい?」
エドワードの顔を見るなり、ニコリと微笑みながらそう告げるロイに。
「はいはい、そんな事より早く報告書読めって」
聞き飽きたとばかりにエドワードが軽くあしらうと。
「これを読めば付き合うんだね?」
「そんなわけねぇだろ!」
ロイは毎回エドワードにあと一歩の所で逃げられてしまうので、彼と付き
合えば最後まで出来るのではと考え、旅先の兄弟の居所を掴んでは電話で
14も年下の少年を口説いていたのだが。
「だいたいアンタ、女好きだろ?」
「それはそれ、これはこれだよ」
何とも腑に落ちない返事をする男にエドワードは呆れ、そのうち気が済む
だろうと放っておく事にしていたのだ。
「…あれから、一人で出来ているのかね?」
ここはこれまで同様下心を悟られないように、ロイは細心の注意を払いなが
ら。
「あー、それがちょっと困った事になって…」
「何?それはいかん!!」
今夜家に来なさいと、そこは有無を言わさず自宅に招く事に成功した。
「それで、困った事とは?」
ロイの自宅で出されたコーヒーを、男のベッド上ですする。
警戒しつつもこれまで頼ってきていたので、エドワードもそれはそれ、こ
れはこれと割り切る事にした。
「えーと、大佐が毎回色々するだろ?だから、何て言うか…」
「私以外で感じなくなった?」
「違っ!じゃなくて…まあ、見れば分かるって」
言葉よりも行動だと、エドワードは男らしく上着をばさりと脱ぎ落とした。
エドワードは感じやすくてイキやすく、回復が早くて淡泊。
これまで何度も彼の悩ましい姿を見せつけられ、欲情した状態のまま放置
され続けた男。
今度こそは悲願達成と、心の中で固く誓っていたが、確かにこれまでとは
少し違っていた。
キスから胸への愛撫、そして下半身に触れてみても、感じやすさは今まで
通りだが、それだけで達する事はなくなっていた。
(これなら、最後まで出来るかもしれないぞ…)
ロイには正直ありがたい彼の身体の変化だった。
少し強い刺激を与えてみても良さそうだなと、ロイはエドワードの中心を
口に含む。
「ええ?やだっっ」
暴れる足を押さえ込むと巧みな舌使いで追い上げつつ、奥の秘部に手を進
めると。
そこは既にヒクヒクと息づいていて、彼自身の愛液で男の指はすんなりと
受け入れられた。
「あっ…あんっ」
くちゅくちゅと卑猥な音を立てながら、ある一点の場所をかすめると。
「ひっ、あああーっ!!」
ビクンと仰け反り、彼の中心が弾けた。
「今のっ…何…?」
それまでとは明らかに違う、脳に突き抜けるような感覚に、エドワードの
全身から汗が噴き出す。
「君はここの方が好きなようだ」
目尻に溜まった彼の涙を優しく掬い取り。
男の指は2本に増やされ、中をかき回される。
「あっ…あんっ…ああっ」
甘い声が耳に届く度、彼の中心からは蜜がとぷとぷと溢れる。
普段からは想像も出来ない彼の淫らな姿に、ロイは堪らず自身を取り出すと
彼の秘部に押し当てた。
その時
「あああんっ…」
「っ…」
腰を押し進めようとした時、ロイ自身が上へつるりと滑り。
その刺激でエドワードは再度達し、その振動でこれまでお預け続きだった
男も、耐えきれず果ててしまった。
「うわー、大佐と俺のとでベトベトじゃん。シャワー借りるからな」
そろりと起き上がり、エドワードは身綺麗になるとすぐに服を着込んでから
「じゃあな、また!」と声をかけると、男の家を後にした。
挿入もせずに達してしまったロイは、ショックでしばらく自室に閉じこも
ったとか…。
[据え膳喰わぬは…-5-]
のどかな景色の広がる小高い丘の上。
休日の昼下がりのロックベル家に、電話の音が鳴り響く。
「エドー!!電話だよー!!」
昼食後、庭の草むしりに精を出していたエドワードは、ピナコに呼ばれて
その手を止めた。
「もしもーし?」
今は生身となった右手で受話器を持つと。
(やあ、久しぶりだねエドワード)
「またあんたかよ…」
よく知った男からのいつもの電話だった。
(元気そうだね、あれから私と付き合う気にはなったかい?)
「あんたなぁ…あれから何年経ったと思ってるんだ!?」
弟の身体を取り戻して旅を終えてからも、ロイからの電話攻撃は続いていた。
(相変わらずつれないね、いい加減顔を見せてくれないかね?)
「いーやーだっ!!」
駄々っ子のように答えると、男のクスリと笑う声が聞こえる。
すぐに気が変わるだろうと放っておいたのだが、女には不自由していない
だろうこの男が、何故こんなに自分に執着するのか。
エドワードには全く理解出来なかった。
(…一人では困っているんじゃないのかい?)
「なっ…あほか!!もう切るからなっ!!」
すぐ近くで作業をしているピナコやウィンリィに聞かれないかと、
慌てて受話器を戻そうとすると。
(待ちなさい、エドワード)
「何だよ!」
これで切るぞと受話器を耳に戻すと。
(愛しているよ)
「兄さん、どうかしたの?」
お使いから戻ったアルフォンスに声を掛けられて、はっと我に返る。
思わずガチャンと切った受話器を見ると、最後に聞こえた男の声が、
耳に残って繰り返し何度も再生される。
「嘘、だろー?」
動揺している自分に、驚愕するしかなかった。
思わず口をついて出た言葉は、発してすぐに納得していた。
尽きない執着に自分でも少々呆れてはいたが、昨日の電話でやっと
出口が見えた気分だった。
「何かいい事でもありましたか?」
書類を抱えて姿を見せた副官のホークアイ大尉にそう声をかけられる。
「そう見えるかね?」
「ええ、見えます」
まるで仕事は真面目にやりなさいと言うように、きっぱりと言い切ってから
書類を机に置いて執務室を後にしたホークアイが。
その原因の張本人と分かる彼とバッタリと会った。
コンコンと、扉をノックする音。
返事を待たずに開けるのは、いつも決まって彼だった。
一瞬の淡い期待が本物に変わり、いつもの余裕の顔ではなく、驚きで
固まってしまった。
「何だよ、せっかく会いに来てやったのに」
「いや、嬉しいよ。近々休暇を取って君に会いに行こうと考えていた所だ」
何も言わない男にエドワードが不満をぶつけると、慌てたように席を立ち、
彼の前まで足を進める。
あの頃よりもスラリと背が伸びたエドワードの、後ろで束ねた金色の髪が
眩しく揺れた。
誰が見ても美しい青年へと成長したエドワードに、目を奪われていると。
「俺はなあ、追いかけられるのは性に合わねぇの!!」
だからツラを拝みに来てやったんだと言ってむくれるエドワードに、男はた
まらず破顔する。
「で、俺をもらってくれるんだろ?」
「無論だ」
即答する男に、今度はエドワードがふわりと笑った。
[据え膳喰わぬは…★-6-]
「だから、見すぎだって」
「隅々まで堪能したいんだよ」
エドワードが男に苦情を伝えると、ちゅっと頬にキスを落として宥め、
そのまま彼の肌に顔を埋めた。
目の前に突然現れたエドワードを即連れ帰りたいと副官に悲願して。
仕方ないと苦笑いするホークアイから許可を取り付けると、准将となった
ロイは嬉々として彼とベッドになだれ込んでいた。
キスはすぐに深い物へと変わり、胸の突起をこさげるように舐め上げると、
すぐに甘い声が上がる。
たまらず彼の下着をはぎ取り、既に蜜で濡れぼそった中心を口に含むと、
追い立てるように攻め上げる。
「あんっ…あああっ…!!」
同時に奥の秘部に指を挿入すると、今にも達しそうに中心は張り詰めた。
「先に出しておくか?」
久々に味わう強い刺激に、溶けた蜂蜜色の瞳から涙が溢れていて。
「嫌だ…あんたので、イキたいっ…」
「そんなに、煽るな…」
今にも自身を突き入れて、滅茶苦茶に犯してしまいたくなる欲望を、
ギリギリの理性で押さえているのに。
ロイは前を寛げると、十分に解した秘部へ強く脈打つ自身をあてがい、
彼に無理をさせないようにゆっくりと腰を進めた。
「あっ…あっっ、おっきい…」
男のモノが支配する圧迫感に耐えていると。
「凄いね、絡みついてくるよ…」
余裕なく息を乱している男の姿に、エドワードの胸がドキリと跳ねる。
ゆるゆるとした動きから、今は大きく打ち付けるように、深く男のモノが
出入りしている。
あの場所を狙われた時、エドワードの背中は弓なりにしなり、そのたびに
彼の中心からは蜜が散った。
「あああっ!あんっ…!!」
もう何度達したか分からない。
それでも男の律動は止まらなかった。
与え続けられる快楽に、エドワードの意識は今にも飛びそうだった。
「エドワード、出すぞ…っ」
彼の限界を感じた男が、更に自身を強く突き上げる。
「あああああっ!!」
最後に大きく最奥まで男のモノが打ち付けられると、エドワードの内壁が
大きくうねった。
彼が中で達したと分かると、その動きに誘われるようにロイの熱が中で弾
ける。
男が達したと分かった所で、エドワードはの記憶は途切れた。
「………やり過ぎ」
「すまん…」
目が覚めたエドワードがむくりと起き上がろうとしたが、そのままくずお
れてしまった。
足と腰と、初めて男を迎えた場所への痛みで、身体に力が入らなくなって
いたのだ。
「ずっと我慢していたので、歯止めが利かなくなってしまった…」
申し訳なさそうに自分の身体を労わる男を見て。
何だこいつ、可愛いじゃないかと思った俺は、やっぱりもうどうしようも
ないんだなと悟った。
「しばらく動けそうにないんだよなー」
ハァと、軽くため息をつくと。
「では、一生私のそばに居なさい」
「言われなくても離れてやらねぇよ」
今度はエドワードが即答した。
-end-
2019-04-27